変わらない音楽
音楽を感情の捌け口にしていないアーティストが好きだ。
スピッツのSONGSを観てそう思った。
10代の頃はむしろそういう音楽が好きだった。
端的に言えば、不幸なアーティストが好きだった(笑)
何故なら、自分も不幸だったから。
そういうのの方が共感できたのだ。たぶん。
30代になって、ある程度社会に揉まれ、子どもも生まれて、守るべきものが増えた。
すると、先述のようなアーティストがなんだか幼く感じるようになった。
40過ぎても音楽を感情の捌け口にしてメンヘラっているアーティストを見ると、「成長してないな」と感じるし、若いアーティストが音楽を感情の捌け口にしていると「若いなぁ」と思うようになった。
今は、一定して高いクオリティを保てる人、全力でおふざけができるアーティストがカッコイイと思う。
スピッツは昔からずっと94〜97年のサウンドを保っているし、どこか別れや死生観漂う草野マサムネさんの歌詞も変わらない。
全力でおふざけしているバンドも、おふざけということは演じているわけなので、本心は関係ない。
本心がどうであろうと、観客を楽しませるために全力でおふざけができるのはプロの仕事だ。
私の中ではベッド・インなんかがそれにあたる。聖飢魔IIやゴールデンボンバーもそうかな。
そう、私はプロの仕事を欲している。
あるいは、ハイブランドのような一生高い価値を保つもの。
つまりは上質な音楽を求めている。
大人になって色々知って、高級志向になったのだろうか。
そういう点ではアニソンもそれかも。
アニソンは作品の世界観が基準にあるので、アーティストの感情の捌け口になりにくい。
自分の意思と関係なく全力で世界観に合わせる必要がある。
演奏レベルが高いものも多い。
なるほど、自分の好きな音楽はバラバラのような気もしていたが、つながった。
結婚したことも大きいかもしれない。
死ぬまでパートナーとの生活が続く。
一生ものの愛がそこにあるよう努める。
その大変さがわかるようになったから、変わらないものの強さを知ることになった。
変わらないものが好き。
変わらないものはさり気ない。
でも独りよがりでは決して手に入らない。
世界は日々変わっていく中でハイクオリティを保つ努力。
それは一時の激しい感情では叶えられないもの。
そういうものが今は美しいと感じる。